第17回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 ●特別講演2
糖尿病教育・看護の技術における価値評価
田倉 智之
1
Tomoyuki Takura
1
1大阪大学大学院医学系研究科
1Department of HealthCare Economics and Industrial Policy, Osaka University Graduate School of Medicine
pp.37-42
発行日 2013年3月15日
Published Date 2013/3/15
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1.はじめに
一般に,人々にとって価値(Value)があるものに対しては,社会的な資源の投入が促されるようである.また,その報酬の水準も高くなるのが世の常と言われている.医療分野は,不可逆的な特性を有する生命・健康が対象となるため,大なり小なり公共資本の投入や第三者による評価・管理が求められる.このような医療システムにおいて,糖尿病看護の技術が有する価値の評価は,どのように展開することが妥当と言えるのだろうか.
近年,糖尿病の罹患者が有病者に占める割合は上昇の一途を辿っており,入院患者に対して73.9%,手術症例に対して30.0%という報告がある1).また,糖尿病性昏睡の患者は,入院群の0.51%と推察されている.このように裾野が広がる糖尿病患者の社会経済的な影響として,直裁的には,医療保険財源の負担の上昇が挙げられる.例えば,維持血液透析についても糖尿病性腎症の場合は,年間医療費は12.4%ほど増えると考えられている.
以上のような背景のもと,本節では,複雑なテーマであることを認識しながらも,社会の幸福(Well-being)の最大化を目的に,準公的医療市場における糖尿病看護の技術評価,価値評価の考え方を整理する.また,行動経済学等の新たな理論を応用したヘルスプロモーション(糖尿病看護における重要なテーマ)の概念を示しつつ,社会経済性(Socioeconomics)に基づいた公的保険制度下における行動変容を紹介し,本分野の発展の一助にしたいと考える.
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