特集 自然保護—特に人間生態学的立場から
自然保護教育と新しい価値観の形成
小川 潔
1
Kiyoshi OGAWA
1
1東京学芸大学自然保護論
pp.554-559
発行日 1980年8月15日
Published Date 1980/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206131
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■はじめに
自然保護というと従来,ともすれば情操的側面でのみ扱われたり,自然の知識だけがとりあげられたりしがちであった.もちろん,自然の知識を増やすことは自然を具体的に管理していく上で必要なことであり,情操教育も自然を媒体として行なうことのできる分野であろう.しかし,自然保護という議論が出てきた背景にある環境問題に目を向けない自然の扱いは,たとえばテレビでカタクリやギフチョウの生息地が紹介されると翌日には採集家がどっとつめかけるといった現象にあらわれているように,自然破壊に組みすることはあっても,そのままでは自然保護には結びつかない単なる自然趣味でしかない結果を招いている.
では,自然保護の教育とはいかなるものかと問われると,必要十分な解答は用意しがたい.つまり,自然保護教育の分野はいまだ確立した体系を持っていない.にもかかわらず,多くの人々が共通して,自然保護の実現は究極的には教育にその解決を求あているのが事実である.
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