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2007年の厚生労働省の調査によればわが国における糖尿病患者数は「糖尿病が強く疑われる」有病者が890万人,「糖尿病の可能性が否定できない」予備群は1320万人で増加の一途をたどっている.このような糖尿病患者数の増加は世界的に見ても同様に認められ,国際糖尿病連合(IDF)のDiabetes Atlasによれば,世界216カ国における20~79歳の糖尿病有病者数は3億6,600万人で2030年には5億5,200万人に達すると推定されている1).なかでも日本,中国,韓国といった東アジア人は,インスリン分泌が不良である素因を有しており,近年の食事内容の変化や運動不足などによってインスリン抵抗性の増大が加わることにより,糖尿病を発症しやすく,東アジアを含む西太平洋地区と東南アジアを併せれば糖尿病有病者数は2011年には2億300万人で,2030年には3億900万人に達すると推定されている(表1).
糖尿病の合併症は進行すると患者のQOLおよび健康寿命を損ねる.日本透析医学会の「わが国の慢性透析療法の現状」によれば,糖尿病腎症による人工透析の新規導入は戦後毎年増え続け,1998年以降慢性糸球体腎炎を抜いて透析導入の原因の1位となり,2010年には約1万6200人にまで達している(図1)2).また,わが国の慢性透析患者数は2010年には29万7,000人に達し,糖尿病によるものはそのうち35.8%と慢性糸球体腎炎に肉薄している.網膜症による失明や神経障害などによる足切断も後を絶たない.また先述の如く,糖尿病は心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患や脳卒中などの大血管障害のリスクも3倍程度増大させる.2007年に報告された1991~2000年のアンケート調査による1万8385名の糖尿病患者の死亡原因調査によると,糖尿病患者の平均死亡時年齢は男性68.0歳,女性71.6歳と同時代の日本人の平均寿命と比較して男性で9.6歳,女性枝13.0歳短命であった3).これらの合併症は患者のQOLを低下させるのみならず医療経済的にも深刻である.
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