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- Abstract 文献概要
近年、伝統的な「医の倫理」をめぐる状況は大きく変貌し、生命科学研究や新薬開発、医師主導型臨床研究等における「研究倫理」の問題、そして終末期医療における延命治療の差し控え・中止や、遺伝子診断等をめぐる「臨床倫理」の重要性がますます注目されるようになってきた。安全管理業務や医療の質向上など、病院機能評価をはじめとする医療マネジメントを考える上でも、今や「倫理」は欠かせない時代である。もはや、ただひたすらに「患者のために」というモラル意識や善意から、医療従事者が“粉骨砕身、懸命に身を捧ぐ”という姿勢だけでは対応しきれない「倫理的問題」が頻発している。
宮崎大学医学部にも1993年から臨床研究プロトコールを審査する「医の倫理委員会(Research Ethics Committee)」は設置されていたが、それとは別に、2012年4月より附属病院に「臨床倫理委員会(Clinical Ethics Committee)」を新設し、同年6月「臨床倫理コンサルテーション」の仕組みも公式に立ち上げた。さらに同年9月、附属病院中央診療部門のひとつとして「臨床倫理部」を創設した。「臨床倫理部」の前身となる倫理コンサルテーション・ルーム【喫茶☆りんり】の取り組みは、2002年9月から始めていたが、現場医師の多くは治療方針に関する「迷い」、特に倫理的法的妥当性に関する「不安」から倫理コンサルテーション依頼をすることが多く、また、自分たち医師の考え方が社会で通用する「常識」なのかについて疑問を持つケースも見られた。その一方で、看護師やその他の医療従事者は、医師と患者さん、またはそのご家族との「板ばさみ」になって、「患者の権利擁護者」としてどのように行動すべきかという苦悩を抱えるようになり、医師の見解と患者さんやご家族の気持ちとの双方に一定の説得力がある場合、看護スタッフの倫理的ジレンマは、よりいっそう深いものとなる傾向にある。
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