特集 倫理的問題への対応を個人の悩みとしないために
機能する病院内臨床倫理委員会をめざして―倫理指針構築の場・倫理教育の場としての期待
稲葉 一人
1,2
,
長尾 式子
1
1京都大学医学大学院医学研究科医療倫理学
2科学技術文明研究所
pp.263-268
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100809
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何が問題なのか
医療・看護の臨床現場では,倫理的問題が山積している。急速に発展する現代医療・先端医療から生ずるさまざまな新しい問題(脳死臓器移植,生体移植,出生前診断,遺伝子診断,遺伝子治療等)のほか,がん患者をはじめとする終末期に行なわれている医療・看護についての問題(がんの告知,鎮静,安楽死・尊厳死等)が,倫理問題としてまず思い浮かぶであろう。しかし,倫理問題とはこれだけだろうか。
実は,医療・看護は,それぞれ個別の患者・家族を相手にする作業の中で,日常的に倫理問題に直面しているのである。医療・看護における情報の提供の仕方と理解(Informed Consent)でつまずく場合,急性期にとどまらず慢性期における医療・看護の方針について医療者-患者家族間にそごが生ずる場合,医療者間あるいは医療者-患者家族間のコミュニケーショントラブルが起こる場合,医療・看護ミスが起こる場合などは,実はいずれも倫理問題なのである。
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