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教育講座
遂行機能障害とその認知リハビリテーション治療
Executive Dysfunctions Following Brain Injury and Treatment Strategies
原 寛美
1
Hiroyoshi Hara
1
1藍の都脳神経外科病院ニューロリハビリテーションセンター
キーワード:
高次脳機能障害
,
遂行機能障害
,
外傷性脳損傷
,
認知リハビリテーション治療
,
ゴールマネジメント訓練
Keyword:
高次脳機能障害
,
遂行機能障害
,
外傷性脳損傷
,
認知リハビリテーション治療
,
ゴールマネジメント訓練
pp.629-637
発行日 2020年7月17日
Published Date 2020/7/17
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はじめに
認知リハビリテーション治療の対象となる認知機能の領域として,外傷性脳損傷(traumatic brain injury:TBI)におけるsystematic reviewの中では,表1に示した領域が挙げられている1, 2).遂行機能はこの1つであり,その障害は遂行機能障害,あるいは遂行機能障害症候群とされ,認知リハビリテーション治療の対象となる.遂行機能障害は,TBIをはじめとした脳損傷患者に認められる重要な認知機能障害であり,日常生活と社会活動上の大きな制約となることが明らかにされている.前頭連合野(図1)3)と,さらにその前頭連合野と神経線維結合を有する皮質下の損傷により引き起こされる.
前頭葉損傷による認知機能障害の症例としては,Phineas Gage(Harlow, 1848)の例が有名である.Gageは1848年鉄道敷設現場の爆発事故により金属棒が左前頭葉眼窩面から内側前頭葉を貫通する脳外傷を受傷したが,一命を取り留めた.事故から20年後に主治医であったHarlowの報告では,事故前のGageの性格は非常に優秀なリーダーであったが,事故後には計画性や社会性が欠如し,脱抑制で衝動的となり,社会的規範に則った行動をとることができなくなったとされる.そして,事故後に保管されていたGageの頭蓋骨をアイオワ大学のDamasioら4)が検証し,眼窩前頭皮質と前頭極を中心とする損傷であったことが明らかにされている.Gageの症状は,今日,遂行機能障害のみならず,社会的行動障害のモデルとしても取り上げられている.
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