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はじめに
脳損傷後の認知機能障害に対してリハビリテーション訓練を行うことで回復に導く手法が,認知リハビリテーションとされる1),歴史的には,脳卒中による右大脳半球損傷により,半側空間無視,身体失認などの巣症状としての視空間認知障害例に対して訓練を実施して良好な帰結を得たことが1970年代に報告されたことに始まる2, 3).その後1980年代に入り,脳外傷による認知機能障害へのリハビリテーション治療が広く行われるようになり,認知リハビリテーション治療とは,障害された認知機能の回復にとどまらず,日常生活上の障害を軽減させることを目的とする治療分野となった3).
わが国においては,2001年度から厚生労働省による脳損傷に起因する認知機能障害に対する支援モデル事業が開始され,その中で「高次脳機能障害」という名称が行政用語として策定された4).そこでは,それまで大脳巣症状として診断されていた失語・失行・失認という症状に加えて,記憶障害,注意障害,遂行機能障害,それに社会的行動障害という4つの認知機能障害の症状が抽出された.しかし,この中で,社会的行動障害は,他の3症状とは異なる特性が論じられており5, 6),例えれば認知症の臨床における周辺症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)に近似した位置づけとして捉える視点も提案されていることに留意すべきである7).
高次脳機能障害に対する認知リハビリテーション治療において,重要な時期となるのが回復期のステージである.脳機能の可塑的改善を進めることができる損傷神経回路に対する直接的刺激法の効果が期待できる時期として位置づけられる.本稿では,回復期のステージにおけるリハビリテーション治療の進め方と,前記の症状の中で記憶障害を取り上げて,リハビリテーション治療の具体的方法について解説したい.
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