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はじめに
脳損傷者の障害像において,高次脳機能障害は,身体障害とともに,社会復帰を阻害する大きな要因である.van der Kempら1)は,121名の軽度から中等度の脳卒中患者について,最も復職に関連する要因は,発症2カ月後の総合的な認知機能とうつ状態の程度であったと述べ,Frideら2)は,163名の軽度脳卒中患者の復職に関する調査において,遂行機能障害の有無に有意差を認めたと報じている.さらに,Kauranenら3)は,140名の虚血性脳卒中患者についての調査において,復職を左右した要素は,認知機能の問題であったと述べている.Edwardsら4)は,脳卒中後の復職に関し,6,473件の文献から抽出された29の研究報告のシステマティックレヴューより,復職には,日常生活が自立し,神経症状が軽度であることとともに,認知機能が良好であることが,最も重要であると結論している.すなわち,リハビリテーション科医は,脳損傷者の社会復帰を指導するうえで,高次脳機能障害の回復を促す治療手技を駆使する能力が求められる.
筆者は,高次脳機能障害を有する患者と家族で構成される「日本高次脳機能障害友の会(旧日本脳外傷友の会)」「東京高次脳機能障害協議会」および「高次脳機能障害ナノさいたま当事者会・家族会」「山梨県甲斐路の会」「東京レインボー倶楽部」の顧問をさせていただいている.急性期治療を乗り越え,リハビリテーション治療を受けてもなお,課題の多い患者の家族にとって,このような団体は,患者・家族間の情報交換,ピアカウンセリングおよび福祉・行政への意見陳述の場としてきわめて大きな意義をもっている.高次脳機能障害に対するリハビリテーション治療は,患者と家族を中心に多職種が連携を取りながら,包括的に展開されなければならないことから,医療専門職が患者・家族会からの意見を傾聴することは,大変に意義のあることである.
本稿では,まず,筆者が,上記の「患者・家族会のニーズ」に応えるために,ともに歩んできた,高次脳機能障害に対するさまざまな治療手技の概略を述べ,次いで,患者・家族会との連携の実際に触れたいと思う.
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