第51回 日本リハビリテーション医学会 学術集会 シンポジウム◎活動再建を考える—活動が変わる—
立位・歩行の機能再建
長谷 公隆
1
1関西医科大学附属枚方病院リハビリテーション科
pp.181-184
発行日 2015年3月18日
Published Date 2015/3/18
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
直立二足歩行は‘ヒト’の象徴的な移動手段である.リハビリテーション(以下,リハ)医療には,立位・歩行を困難にしている医学的原因を診断・評価し,それらの問題を解消または軽減するための代償的手段を含めた治療法を,障害の特性や個人のニーズに応じて適用する責務がある.しかしながら,代償への過度な依存は,リハ医療の本来の目的である機能回復の妨げとなる可能性もあることから,運動学的・神経生理学的な診断に基づいて,患者の能力を最大限に引き出すリハ治療を計画することが重要となる.
立位・歩行の機能再建は,床面に接地した両足部下での狭い支持基底面において身体を制御する能力を回復させることに始まる.立位保持等の姿勢制御に関する神経生理機構は,姿勢動揺を抽出する視覚,前庭および体性感覚情報を基本的には無意識下で自動的に処理する反射階層理論によって検証されてきた.ところが,立位制御には,筋出力や認知的処理,予測姿勢制御といった反射制御のみでは解決できない側面があり,姿勢制御機構は複数のシステムが並列的かつ補完的に関与することで形成されている.Horakら1)は,治療的介入の標的を検出することを目指し,生体力学的制約,垂直性,姿勢反応,歩行安定性などの各システム(図1)を個別的に評価することを推奨している.特定のサブシステムにおける機能障害は,別のシステムにも影響を及ぼすことから,システム理論に基づいた機能評価とその治療法の開発は,立位・歩行の機能再建を図るうえで重要な課題となる.
Copyright © 2015, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.