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はじめに
歩行の科学的研究の端緒1)は約300年前に遡るが,床反力測定は今世紀に入ってからAmar2)(1920)によってヒトのランニング中の測定が,またElftman3)(1939)によって歩行中の測定がはじめて試みられた.立位時の身体動揺に関しては19世紀におけるRomberg4)以来数多くの研究が行われてきたが,ひずみゲージ式床反力計の導入5)は1970年頃からなされた.
現在では床反力測定は歩行解析において重要な手段であり,身体運動を総合的に解析する上で不可欠のものとなっている.そのほか床反力そのものを分析の対象とした研究6,7)も少なくない.床反力は被験者に何らの侵襲を与えず,特別な負担なしにかつ測定が容易にできることが特徴であるが,得られたデータはパターンとして取扱われる場合が多く,個々の波形を分析する場合にもその力学的意味は必ずしも明確にされてはいない.これは人体のような複雑な力学的構成体において力と運動との関係を詳細に記述することが困難であることにもよる.しかし,人体そのものの力学的分析とは別に,得られるデータと身体運動との関係について十分な力学的検討が行われていなかったことにも原因がある.
身体運動について力と運動の力学的関係を厳密な形で導いておくことは床反力測定に理論的基礎を与えるのみでなく,データの臨床的解釈上においても重要なことである.近年床反力測定装置はますます精密化かつ大形化の傾向にあることからもデータの力学的意味を明らかにしておくことは,種々の測定条件における誤差を推定し,測定限界を明らかにするためにも必要である.
これらの点を明らかにする目的で本報告では床反力測定装置から得られたデータと身体重心の位置との間に成立つ関係を一般的な形で導き,それらから身体重心の移動を求める近似式や角運動量の時間変化率など臨床上有用なパラメータが得られることを示した.
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