第51回 日本リハビリテーション医学会 学術集会 シンポジウム◎活動機能構造連関—活動が変える—
感覚入力によって制御されるニューロン再生機構
澤本 和延
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科再生医学分野
pp.108-110
発行日 2015年2月18日
Published Date 2015/2/18
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
脳梗塞など神経疾患によって失われた機能の回復を促進するためにリハビリテーション(以下,リハ)が用いられている1).これらの多くは,筋肉や,傷害後に脳内で生き残った神経回路に刺激を与え,運動機能を高めることを目的としたものと考えられる.一方,近年の研究によって,生後の発達期を終えた脳においても幹細胞から新たなニューロンが作られており,神経回路の維持・可塑性や疾患後の病態・再生に関わっていることが明らかになってきた2,3).したがって,リハによる神経機能の回復機構を研究する際には,脳傷害後に生き残ったニューロンのシナプスレベルの変化等に加えて,新たにニューロンが追加されることによる神経回路の変化を考慮することも重要であると考えられる.
筆者らは,動物モデルを用いて,成体脳におけるニューロン再生のメカニズムを解析してきた4).多くの動物において,側脳室外側壁に沿って存在する脳室下帯に神経幹細胞が残存しており,継続的にニューロンを産生している.これらの新生ニューロンは,正常時には嗅球へ移動し,嗅覚に関わるニューロンに分化する.一方,脳梗塞などの傷害が生じると,これらの新生ニューロンの一部が傷害部位へ移動してニューロンを再生することから,再生医療への応用が期待されている.本稿では,活動による神経回路の構造・機能への影響の例として,嗅覚刺激がニューロン再生に影響を及ぼす影響に関する筆者らの研究の概要を紹介する.
Copyright © 2015, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.