巻頭言
感覚入力と教育
福井 勉
1
1文京学院大学
pp.329
発行日 2024年4月10日
Published Date 2024/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203082
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大学の授業を一斉にオンラインに切り替えたことの功罪が問われる時期になった.オンライン授業には長所も短所もあるために,その選別が重要だというものが多くの論調である.知識よりも技術の伝達の授業,さらにOSCE,臨床実習などではオンライン授業には限界がある.それはその通りなのだが,対面とオンラインでは一体何が違うのだろうか.浅学菲才の頭でこう考えた.対面授業では発信側と受信側双方に感覚が強く作用する.逆にオンライン授業,その中でもオンデマンド型では受信側の受動性が際立ってしまう.オンラインの会議も一斉に増えたが,カメラ付きライブでないと,受動性はやはり高まることになる.会議中に,別の業務を行っていても他の人にはわからない短所(長所?)がある.この感覚使用の濃淡で実際に受け取る情報量が格段に異なるのは自明のことと思う.
今までに理学療法士を対象とした実技研修会を数えたところ大小取り混ぜ500回ほど行ってきた.実技研修では受講する人の感覚が何と言っても重要である.アーティストのライブ活動のように,研修会も毎回異なるのは,話し手よりもむしろ聞き手の質かもしれない.そのくらい有資格者の差は歴然としてある.デモンストレーションで示したことをそのまま行っても,人は違うことをしてしまう.無論,私自身の能力不足は否めないが,それだけではないように感じる.質が重要な実技内容であるほど,デモンストレーションはさらに難しい.
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