Japanese
English
特集 小脳
小脳による運動制御のニューロン機構—前庭系との関係を中心に
The control mechanism of the cerebellar motor systems: With special reference to the vestibulocerebellum
伊藤 正男
1
Masao ITO
1
1東京大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.857-867
発行日 1973年10月10日
Published Date 1973/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903547
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
従来,小脳は運動協調をつかさどる器官と考えられてきた。この考えはFlourens(1842)が初めて唱えたものであるが,後の研究者たち,とくにChambersとSprague(1955a,b)の研究により敷衍され,1950年代には次のような考えがほぼ確立していた。小脳はいくつかの部分に区分でき,各区分はそれぞれある種の運動制御の協調に役立っている。小脳内側の虫部は主として体平衡に,傍虫部は体の移動に,そして小脳半球は随意運動に関係する。前庭小脳とよばれる系統発生的にもっとも古い部分は前庭器官と密接に関連しながら発達してきたものである(Herrick,1924)。
過去10年間小脳および小脳に関連する組織における神経活動に関する知見は大きく前進した(Eccles,ItoとSzentagothai 1967,EvartsとThach 1969;Llinas1969参照)。小脳性運動協調の機構にアプローチするため次のような三つの新しい道が拓かれてきた。第一の道は小脳皮質のニューロン結合を分析し,どのような情報処理がそこで行なわれるかを想像するものである。たとえば小脳プルキンエ細胞がきわめて規則正しく配列し,1本の平行線維が何百というプルキンエ細胞に次々とシナプス結合をしていく様子をみて,BraifenbergとOnesto(1962)は小脳を一種の時計と考えた。
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.