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はじめに
我が国でのリハビリテーション(以下,リハ)の流れは1960年代を中心に,障害からの機能回復,社会復帰そして人間復帰を考えてきた.しかし1980年代になり,障害への対応だけでなく高齢からの人間としての尊厳性の低下により社会的脱落に陥っていく,いわゆる高齢社会の大きな課題を抱えるようになってきた.1980年に生じてきた課題は,1)寝たきり高齢者の増加,2)認知症高齢者の増加,3)高齢者の医療費・介護費の増加,4)長期入院高齢者の増加の4つである.障害と加齢から生じる自立性の喪失は大変なる国家的課題であり,そのような中で地域社会での生活自立を維持できる在り方の重要性がうたわれ,世界保健機関(WHO)は障害から生活機能の自立充実をとらえ,2001年に障害国際分類から国際生活機能分類に大きく視点を転換した訳である.医療保険の充実は,高齢期における疾病治療に大きな貢献を果たしてきたが,高齢期を中心に生活機能の向上を促し,自立生活の維持のためには介護力の充実が必要であった.いわゆる寝たきりで長生きではなく,元気ではつらつと社会参加できる生活の質(QOL)の充実である.2000年に始まった介護保険が,生活自立の向上と失われる生活機能を支援するサービスの両面からの大きな力となった(図1,2).しかし,介護サービスの充実は自立を高める方向へと期待を作っただけでなく,逆に生活機能の低下をきたし,寝たきりの方向も改善されない症例が多くみられるようになり,入院医療,施設入所介護だけでなく,在宅での健康の維持,在宅での生活機能の維持を強く期待されるようになった.いわゆる地域社会での在宅医療,在宅介護の充実である.そのようなことをいち早くとらえて取り組まれたのは公立みつぎ総合病院の山口昇先生を中心とした地域包括ケアである.実際には,地域社会での認識の向上と社会資源の充実と連携体制の構築がなければ現状とは遠いものになってしまう.
我が国は厚生労働省を中心に,あらためて地域包括ケアシステムの構築の方向へ大きく舵取りを行ってきた.地域包括ケアシステムの実現と充実には多くの職域組織の連携,即ち多職種連携の充実がなければ絵に描いた餅となってしまうが,その中心的役割を担うのは地域リハの充実である(図3).これまで障害・高齢を中心に取り組まれてきた地域リハであったが,地域社会の在り方から考えた場合,色々な矛盾を生じてきたように思われる.即ち地域社会での社会弱者といわれる中に疾病障害や高齢だけでなく,貧困・犯罪・ホームレス等も含まれるわけであり,このようなものにどう対応していけるのかはいまだ未解決の問題である.それに,阪神大震災や東日本大震災等の自然災害により地域社会での生活機能を失うことより,生活基盤そのものが破壊されてしまうという事態をどう解決していくのかが大きな課題として浮上してきた.地域リハの立場から生活基盤の再構築,そしてすべての住民の生活機能の再構築に取り組む必要がある.そのように考えると,地域社会全体を,疾病・障害・高齢・犯罪等と総合的に大きくとらえ,社会作りを行っていくためには,まさにSocial Inclusion(ソーシャル・インクルージョン,社会的包摂)の構築が最も重要である.
Abstract : It is believed that the Ministry of Health, Labor and Welfare has set a goal of creating an environment whereby “community based integrated care” can be provided in Japan. In the ICF as defined by WHO, it has been proposed that the Functioning aspect be augmented and supported by “community based integrated care”. We suggest that Community Rehabilitation Service and Social inclusion are important factors in community based integrated care.
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