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促通反復療法とその基礎理論
促通反復療法は川平(2006)1)が提唱する運動療法で,これまで片麻痺上肢2~4)や大脳皮質基底核変性症例における上肢の運動障害5),片麻痺下肢6),外眼筋麻痺7)に対してその効果が示され,近年は他施設からもその効果が報告されつつある8,9).促通反復療法は片麻痺回復を促進するために,(1)複数の刺激を用いて目標とする神経回路の興奮水準を高め,(2)そこで意図した運動を実現させ,(3)さらにその反復によって損傷した運動性下行路を再建,強化することを目標としている.すなわち,(1)患者が動かしたい部位に徒手的に刺激を与えて伸長反射や皮膚筋反射などによる運動を誘発し,(2)患者の動かそうとする意志や患肢注視,治療者によるタッピングや聴覚的指示を組み合わせることによって患者の意図した運動をより容易に(努力性の共同運動パターンを強化させることなく)実現させ,(3)集中的に反復する(1つの運動パターンにつき数分間で100回程度)ものである.以上のように反射運動と内的および外的誘導のコンビネーションによる運動の発現およびその集中反復は,促通反復療法における身体各部位の治療法として共通している.近年,脳には可塑性があり10),その発現は使用頻度依存的であること11),シナプスおよび神経回路においては興奮が伝達されて初めてその形成や伝達効率が強化される12)ことが広く明らかとなり,これらが促通反復療法による機能回復の理論的根拠となっている.
一方,脳卒中早期から回復期の患者では,訓練量の増加が日常生活動作(ADL)や機能障害の回復に有効なことが明らかとなっている13).ところが通常の臨床においては,良質な自主訓練が可能な患者を除いて,治療者による個別の運動療法を必要とするのが一般的だが,マンパワーや医療保険上,時間の制約があるために規定時間内に最大限の効果を得ることが求められる.そのためには「治療の質」の向上が不可欠であり,促通反復療法は効率よく目標の機能を再獲得させる「真の神経筋促通法」と我々は考えている14,15).
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