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促通反復療法とその基礎理論
促通反復療法1)は,促通手技によって随意運動を実現し,それを反復することによって随意運動を実現するために必要な神経路を再建,強化することを目標としている.具体的には,① 患者の動かそうとする部位へ徒手的な刺激や操作を加えて伸張反射や皮膚筋反射などによる運動を誘発すると同時に,② 患者の動かそうとする意志や患肢への注視,聴覚的刺激(治療者による口頭指示)の組合せによって患者の意図した運動を努力性の共同運動パターンを強化させることなく,より容易に実現させ,③ 1つの運動パターンにつき数分間で100回程度反復する(図1).このように脊髄反射と内的,外的誘導による随意運動の実現,そしてその集中反復は,促通反復療法における身体各部位の治療法として共通する2-5).近年,脳の可塑性発現は使用頻度依存的であること6),シナプスおよび神経回路では興奮が伝達されて初めてその形成や伝達効率が強化されること7)が広く明らかとなり8),これらが促通反復療法による機能回復の理論的根拠となっている.
一方,脳卒中早期から回復期において,患者に対する訓練量(時間や回数)の増加が日常生活動作(activities of daily living;ADL)や機能障害の回復に有効なことが明らかとなっている9).一般的に,良質な自主訓練ができる患者を除いて,治療者による個別の運動療法を必要とするが,マンパワーや医療保険の制約のために訓練時間を増やすことは容易ではない.規定時間内に最大限の効果を得るには,運動の頻度を上げ,治療の質(内容)を向上させることが重要と考えられる.これまでの報告では,従来の神経筋促通法(促通手技,ファシリテーション)が脳卒中片麻痺患者における筋力や共同運動,筋緊張,巧緻性,ADLについて伝統的リハビリテーションなど他の治療法に優れることはなく,脳卒中治療ガイドライン2009において推奨グレードはC1,すなわち十分な科学的根拠がないとされ10),最近の海外のレビューでは推奨されない治療法とされている11).促通反復療法が従来の神経筋促通法に対して異なるのは,意図した運動を実現して高頻度に反復する点,患者への徒手抵抗は弱く最大筋力を発揮させない点,個々の手指の運動への促通手技を有する点などが挙げられる12,13).
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