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がんのリハビリテーションはなぜ必要なのか?
1981年以来,がんは日本人の死亡原因の第1位となり,その後も人口の高齢化とともに,年々増加傾向にある.2000年にがんで死亡した人は約30万人で,年間死亡者数の約3分の1に達する.がんは人類を悩ます共通かつ最強の敵ともいうべき疾患であり,わが国でも疾病対策上の最重要課題として対策が進められ,現在では集学的がん治療により少なくとも,がん患者の半数以上が治るようになった(図1)1).がんの治療を終えた,あるいは治療を受けつつあるがん生存者は2003年には298万人であったが,2015年には533万人に達すると予測されており(いわゆる“2015年問題”),がんが“不治の病”であった時代から“がんと共存”する時代になってきている2).
一方,2006年に制定された「がん対策基本法」においては,基本的施策として,がんの予防および早期発見の推進,研究の推進等と並んで,専門的な知識および技能を有する医療従事者の育成,がん患者の療養生活の質の維持向上が,国・地方公共団体等の責務であることが明確にされた.患者には病状,進行度に合わせて最善の治療を受ける権利があるということが謳われているのであるが,現実には,“がん難民”という言葉に代表されるように,医師や病院によって,薦める治療法が全く異なったり,治療成績に格段の差があったりすることが,いまだ日常的に起こっている.がん診療連携拠点病院の整備等,行政面での取り組みはやっと始まったばかりであり,治癒を目指した治療から生活の質(QOL)を重視したケアまで,切れ目のない支援をするといった点で,今の日本のがん医療はいまだ不十分であるといえる3).
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