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はじめに
高齢化社会に突入しつつある今日,わが国でもリハビリテーションという言葉は医療や福祉の分野で盛んに用いられ,患者のQOL(quality of life)向上を目指したリハビリテーションの重要性は一般の人にまでかなり浸透してきた.しかし,悪性腫瘍(以下,がん)治療の分野ではどうであろうか.欧米では,がん治療の重要な一分野としてリハビリテーションが位置づけられているが,わが国では最近まで,がんセンターなどの高度がん専門医療機関において,リハビリテーション科専門医が常勤している施設は皆無であり,療法士もごくわずかという寂しい状況にある.
一方,一般のリハビリテーションの医療現場においては,がんの直接的影響や手術,化学療法,放射線治療などで身体障害を有する症例に対し,障害の軽減,運動機能低下や生活機能低下の予防や改善,介護予防を目的として治療的介入を行う機会は多くなってきており,がんに伴う身体障害はリハビリテーション医学の主要な治療対象の一つになりつつある.
がん患者では,がんの進行もしくはその治療の過程で,認知障害,嚥下障害,発声障害,運動麻痺,筋力低下,拘縮,しびれや,神経因性疼痛,四肢長管骨や脊椎の病的骨折,上肢や下肢の浮腫など,さまざまな機能障害が生じる.それらの障害によって,移乗動作や歩行,セルフケアをはじめとする日常生活動作(ADL)に制限を生じ,QOLの低下をきたしてしまう1).これらの問題に対して,二次的障害を予防し,機能や生活能力の維持,改善を目的として,リハビリテーション介入を行う必要性は今後増え続けると推測されることから,リハビリテーションに携わる医師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師などの職種スタッフが,がん患者に対するリハビリテーションの知識やテクニックを身につけておくことは大変有用であろう2).
本稿では,がん医療においてリハビリテーションがどのように位置づけられ,どのような役割を担っているのか,欧米や日本の現状と今後の動向についてその概要を述べる.
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