特集 介護ロボットやAIなど最新介護機器
ロボットテクノロジーにより進化する移動機器
沖川 悦三
1,2
1神奈川県総合リハビリテーションセンター
2神奈川リハビリテーション病院研究部リハ工学研究室
pp.263-266
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200832
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はじめに
昭和30年代生まれの筆者が若い頃,「21世紀」というのは科学技術の発達により人類の暮らしが著しく良くなることを空想し,夢見た時代であった。そして現実の時代,21世紀初頭にiBOT(アイボット)(図1)という電動車椅子がアメリカで商品化され,日本に紹介されたときは驚き,まさに「21世紀」を感じた出来事であった。
iBOTは4つの駆動輪と2つの自在輪(キャスタ)の6輪構造で,ジャイロセンサとコンピュータによる姿勢制御機能が組み込まれている。通常モードでは後部駆動輪と前輪キャスタの4輪でジョイスティックレバー操作により走行する。4輪駆動モードではキャスタを挙上して4つの駆動輪により走行する。砂地や草地,砂利道などの不整地走行や10cmまでの段差昇降ができる。坂道や段差では座席が自動で一定の角度に保たれる。そしてここからがすごいのだが,階段昇降モード(図2)では本人が手すりを利用して体重を前後に移動することで階段を昇降する。介助者による操作も可能である。2輪バランスモード(図3)ではジャイロセンサの働きにより2輪で起立した状態となり,その場での停止も走行もできる。
夢のような車椅子であるが,高額で補装具給付の品目に入らなかったため普及に至らず,アメリカでも2008年に生産中止となった。
それから約10年が経ち,日本では厚生労働省と経済産業省がタッグを組みロボット技術の介護利用に力を入れてきたこともあり,ロボット技術を応用した移動機器についても開発が進み市販化されるものが増えてきた。本稿では,その中からいくつかを紹介してみようと思う。
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