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日本では現在,少子化が進み,また,在宅を目指した医療の推進などの影響から,子どもの入院が減少してきている.一方,病院も経営上,病床稼働率を下げることなく在院日数を減らすことが「生き残りの道」とされ1),いかに効率よく空床を活用するかを考えなくてはならず,診療科別病棟にこだわらない混合病棟化が進んでいる.このような現状の中,子ども専用の病棟の経営はますます困難となり,小児・小児科病棟を縮小,閉鎖し,子どもと大人の混合病棟への移行が行なわれている.
1992年に舟島他2)は,全国の300床以上の総合病院に対して行なった調査から,約55%の施設が子どもと大人の混合病棟を有していたと報告している.それから10年あまり経つが,このような全国調査は他に見当たらない.しかしその後,さらに少子化は進み,小児医療そのものが縮小されていることから,子どもと大人の混合病棟がますます増加していることは容易に推測される.
私が今まで見てきた子どもと大人の混合病棟の中には,子どもと大人が同じ病室に入院し,プレイルームもなく,看護師が病室でどのように遊びの提供をしていったらよいか迷っている施設や,幼児であっても大人と同じ献立内容の病院食が,大人用の重い瀬戸物の食器で配膳され,子どもの体型には明らかに合っていない床頭台と椅子での食事に,食の進まない子どもがいる施設があった.また,食事の前に手を洗うことや,食事用のテーブルの上を片付けることなしに食事の時間になってしまい,そのままの状態で食事を始める子どもの姿が見られる施設などもあった.
大人であれば自分で時間の過ごし方を考えたり,自分自身の判断で環境を整えようと看護師や施設側に働きかけたりすることが,ある程度可能であると思われる.子どもと大人の混合病棟での,子どもの入院環境が整えられていない現状についての報告がなされはじめているにもかかわらず,その改善はなかなか進んでいない.
1994年に日本でも批准した「児童の権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child)」によると,子どもはどのような状況にあっても適切な援助を受ける権利を有しているとある.これは,現在のように小児医療が縮小され,子どもと大人の混合病棟が増加している状況であっても,看護師が入院している子どもに対し,発達段階に合った質の高い看護を提供していくことが必要である,ということを示しており,今,小児看護のあり方を問われる時がきているのではないかと考える.
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