連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・15
大人のような子どもリナトへ
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.554-555
発行日 2005年6月1日
Published Date 2005/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100232
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リナトとの出会い
リナト,私が君に初めて関心を持ったのは4年前になる。6歳の君は母親と一緒に,芋を売っていた。芋が一杯入った薄いビニール袋を幾つも小さな指に食い込ませながら,この辺の急な坂道を上り下りしてたね。大きな声で「芋ー芋ー要りませんかー」って,うつむくことなく売っていたね。ほかの子どもたちに真似されたり,はやし立てられたり,時に石を投げられながらも決して泣かない君の強さに驚き,君の人生の厳しさを考えたよ。
お母さんが8人目のお産の時,初めて君の家族と身近にかかわった。君は小さな兄弟にご飯を食べさせ,家の外に連れ出して世話をしていたね。それからは赤ちゃんを産んでもほとんど世話をしない母親の代わりに,瘦せた弟を君が抱っこして,毎日もらい乳に連れて行っていたことも知っている。
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