巻頭カラー 地域をあるく
大槌町訪問記〔後篇〕—3.11東日本大震災時,大槌町「吉里吉里人」の行動に学ぶ—主体性・自主性が自助・互助を生む世界
中島 龍星
1
,
生田 敏明
1
1一般社団法人 是真会 長崎リハビリテーション病院
pp.96-99
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200535
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はじめに
あの日,大槌町には,未曽有の巨大地震により発生した黒色の大津波が押し寄せた。同地区の多くの住民が家族を失い,沿岸寄りの建物はすべて破壊され流された。町の中心部にあった役場も津波にのまれ,町長をはじめ多くの幹部職員を失い行政機能は麻痺し,町は壊滅的状態に陥った。
そのような中でも,吉里吉里地区住民は,津波から逃れた直後から,住民自らが声を上げ行動を起こした。すぐに避難所生活の準備や行方不明者の捜索に着手し,その晩には「吉里吉里地区災害対策本部」を立ち上げた。以降,避難所が閉鎖するまでその主体性・自主性ある取り組みは力強く続けられたと聞く。
今回,その当時,対策本部の中心的役割を担った東谷寛一氏,芳賀衛氏,藤本俊明氏の御三方に直接お会いし,今回の訪問を率いた栗原正紀(長崎リハビリテーション病院 院長,本誌編集委員長)がその当時の思いや行動など貴重なお話を聞く機会を得た(写真1)。それらの話はいろいろな意味でとても感慨深いものであった。取材後は今後の自然災害における避難所生活や事前の心構えなどの教訓になっただけでなく,今次における人口減少,少子高齢化,財政難など諸々の課題を抱える中での地域の在りようや,私たちリハビリテーション医療に携わる専門職としての役割や仕事の仕方などにも置き換え,考えを深める機会になった。以下に,その発災当時の吉里吉里地区住民の行動を紹介する。
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