連載 夕凪の島で共に暮らす─離島の特養における認知症ケア・第5回
ケアを支えるもの:ケアづくりとチームづくり
武原 光志
1
1特別養護老人ホーム光の苑
pp.337-339
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200377
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認知症状は改善する
認知症およびケアの詳細については成書をお読みいただきたいと思いますが,光の苑での経験から言えることは,中核症状の改善は難しいけれども,周辺症状(BPSD)はケアの力と環境の整備で改善できる! と確信してケアにあたるということです。実際,光の苑で生活されている人々を見れば,認知能力は低下しても,本人が保持する能力で処理できる(=本人のリズムとペースで過ごすことができる)環境の整備と関係づくりができれば,そして,十分な食事摂取と水分摂取,排泄,さらに睡眠(熟睡)など生活リズムを整えることができれば,穏やかに生活できる,そのように実感することができます。認知症状は,認知能力が低下した本人と周囲の環境(人的,物的環境)との間に生じる不適応現象だとすれば,低下した認知能力で対応できる(解決できる)環境を整え,認知能力の低下をサポートするケアを提供できれば症状は改善するということになります。
そのためには,ケアを受ける側に立って,ケアの内容を考え,組み立てることに尽きるのではないかと思います。繰り返しになりますが,脳に疾患を抱え,認知することに障害を負いながらも必死に生き抜いている人として敬意をもって向かい合い,不自由をされているところにケアを届ける。「正常」なるものを基準として判断することをやめ,その人が「できる」スタイルで生活を営むことに徹する。中等度から重度の認知症状がある人々に対しては,非言語でのコミュニケーションをも駆使してケアする,そのようなことの積み重ねが大切なように思います。
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