胸椎後縦靭帯骨化症に対する後側方進入脊髄前方除圧術

Anterior Spinal Cord Decompression by a Posterolateral Approach for the Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament in the Thoracic Spine

はじめに

　生理的後弯を有する胸椎の後縦靭帯骨化症（ossification of the posterior longitudinal ligament：OPLL）において，骨化形態や局所アライメントによって脊髄前方除圧（骨化の浮上もしくは切除）が望ましい症例が存在することは論理的に疑いようがない．しかし，胸椎OPLLに対する前方除圧術は，前方進入，後方進入のアプローチにかかわらず難易度の高い手術であり，術後の麻痺増悪などの手術合併症の問題により，これまで限られた施設でのみ実施され，多くの脊椎外科医が利用できる手術方法や確固たる治療戦略（前方除圧の適応）は明示されてこなかった．

　われわれは胸椎OPLLに対する脊髄前方除圧術において，安全かつ確実なOPLLの浮上を可能にする後側方アプローチによる前方除圧術を2010年に考案し，2012年に論文を発表している^7）．近年では多くの施設で追試され^15,18），その有用性を実感している脊椎外科医も多い．本稿では，この手術法のアウトライン，手術適応を論述し，最後に骨化浮上を達成するコツや注意点を供覧する．