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はじめに
首下がり症候群(dropped head syndrome:DHS)は立位や座位において前方注視困難を主訴とする病態であり,一般的にはchin-on-chest deformityを呈する疾患群として知られている.DHSは高齢女性に好発し,頸部痛,脊髄症,摂食嚥下困難,あるいは整容面での問題を呈し,患者のQOLを大きく障害する.しかし,その病態の詳細はいまだ不明である.DHSの成因としては,神経・筋原性疾患群と非神経・筋原性疾患群に大別できる9)が,整形外科を受診する患者の多くは特発性である.DHSに対する治療としては,まずは頸椎カラー装着や頸部の可動域訓練,あるいは頸部伸筋群の筋力訓練などの保存的治療を行い5),無効例に対して手術を勧めている.術式に関してはなお統一された見解はなく,術式や固定範囲は術者裁量に委ねられている感は否めない.われわれは,首下がりを含む頸椎後弯に対する手術における固定アンカーとして,最大の固定力を保証する頸椎椎弓根スクリュー(cervical pedicle screw:CPS)を用いている3).さらに,術式の決定においては以下のアルゴリズムを提唱している6).すなわち,術前の頸椎伸展位にて後弯が整復可能である症例に対しては後方単独手術(P)を施行する.まずCPSを適宜挿入する.脊柱管狭窄のない脊柱変形の症例では必ずしも除圧は必要ではないが,脊髄症を呈していたり脊柱管狭窄を伴う場合にはまず椎弓形成術を施行し,脊髄背側に十分なスペースを確保してからカンチレバーを用いて後弯矯正を行う.一方,非整復例に対しては後弯を整復するために前方解離が必須であり,うち脊柱管狭窄や椎間関節癒合のない症例に対しては前/後手術(AP)を,脊柱管狭窄や椎間関節癒合を合併している症例には後/前/後手術(PAP)を施行する.PAPでは,まず後方よりCPS挿入,椎弓形成,癒合している椎間関節切除,予防的椎間孔拡大術などを行い,続いて前方に回って後弯の頂点2椎間程度の前方解離とケージ挿入を行う.そして最後に再度後方に回り,CPS間をロッドで連結し,さらなる前弯位獲得に向けてカンチレバーを用いた調整および自家骨移植を行う6).
固定範囲に関してもなお統一されたコンセンサスは得られていないが,DHSは必ずしも頸椎に限局した病態ではなく,全脊椎矢状面アライメントでの病態評価が固定範囲決定の一助となるため,次項で詳しく述べる.
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