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はじめに
悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor:MPNST)の手術を含めた治療方針を決定,実施する際に注意すべき点は,ほかの軟部肉腫と異なり,MPNSTの約半数が常染色体顕性遺伝性疾患である神経線維腫症1型(neurofibromatosis type 1:NF1)患者から発症することである4).NF1患者に発生するMPNSTは,その前駆病変である叢状神経線維腫(plexiform neurofibroma:PN)の悪性転化で発症することが多く,NF1患者においてMPNSTを発症する生涯リスクは15%を超えるとの報告もある13).
PNがMPNSTに悪性転化する際には,その過程で,まず中間型腫瘍に転化し,中間型腫瘍がMPNSTへと2段階で悪性転化することが報告されている.最近,中間型腫瘍をatypical neurofibromatous neoplasms of uncertain biological potential(ANNUBP)として分類することが提唱されている9).
以上の点から,特にNF1患者に発症するPN-ANNUBP-MPNSTの治療方針を決定する際には,それぞれの段階の腫瘍で治療法が異なることに細心の注意を払うことがきわめて重要である.最近,3〜18歳のNF1患者に発症した切除不能な症候性PNに対してMEK阻害剤であるセルメチニブの使用が承認された.しかし,ANNUBPには効果のエビデンスはなく,またMPNSTに対しては適応がないため原則的に使用してはならない.MPNSTには適応となっている別の抗がん剤・分子標的薬がある.また手術法についても,PNとMPNSTでは異なり,ANNUBPに対する手術治療については現在国内外の専門施設においてデータを集積しているところで,今後適切な手術法が提案されると思われる.
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