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椎間板変性を基盤とした腰痛は,超高齢社会を迎えた日本において,克服すべき課題の1つです.近年の椎間板の変性メカニズムや再生に関する基礎研究の進歩は目覚ましく,またそれらの知見を基盤とした新たな治療が数多く提案されつつあります.これらの知見をまとめ,今後の椎間板変性に対する治療戦略を議論することを目的として本特集を企画しました.
まず,藤田順之先生は椎間板変性に影響を及ぼす種々のシグナル研究,中でも酸化ストレスに着目し,N-acetylcysteineを用いた新たな治療戦略を,また由留部崇先生はオートファジーに着目した新たな治療戦略を記載いただきました.須藤英毅先生は生体吸収性のバイオマテリアル,さらに間葉系幹細胞を併用した新たな治療法の開発について記載いただきました.大鳥精司先生は椎間板性疼痛とサイトカインに着目し,抗TNF-α阻害剤や抗IL-6受容体抗体を用いた新たな治療法戦略を,川口航希先生は近年注目を浴びている多血小板血漿(PRP)の椎間板に対する影響に着目し,椎間板性疼痛に対するPRP椎間板内注入療法の現状と今後の展望について記載いただきました.坂野友啓先生は,すでに臨床現場で使用されている椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ療法の適応と手技,これまでの治療成績について,また波呂浩孝先生には現在医師主導治験を行っているヒトリコンビナートMMP-7に関するこれまでの基礎研究と今後の展望に関して記載いただきました.最後に,近未来の再生医療として期待されている椎間板の再生医療については,小笠原頌太先生には自家・他家髄核細胞を,また萩澤宏樹先生にはiPS細胞を用いた基礎研究の現状と臨床に向けた今後の展望を記載いただきました.
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