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超高齢社会を迎えた日本において,頸椎症性脊髄症の患者数は今後も増加することが予想されており,脊椎脊髄外科医にとってその治療戦略はきわめて重要なテーマであることは論を待たない.頸椎症性脊髄症に対する多くの術式が,わが国で開発されてきた背景を踏まえて,本号では頸椎症性脊髄症に対する手術治療戦略について,手術適応のタイミングや異なる術式の最新の知見を交えて議論することを目的として企画させていただいた.
まず,頸椎症性脊髄症に対する保存療法に関して蜂谷裕道先生に依頼させていただいた.日常診療においてきわめて重要なテーマであるにもかかわらず,ともすれば軽視されがちであるが,多岐にわたる詳細な内容を記載していただけた.次に,手術適応のタイミングに関して,慶應義塾大学の辻収彦先生に拡散テンソル投射路撮影に基づく新たな手術適応のタイミングに関して記載していただいた.次に代表的な術式として,棘突起縦割法椎弓形成術は三井記念病院の星地亜都司先生に,筋肉温存型選択的椎弓切除術は国立病院機構村山医療センターの山根淳一先生にお願いした.また,術式選択として椎弓形成術と前方固定術の比較を東京医科歯科大学の吉井俊貴先生に依頼させていただいた.前向き比較研究の結果,前方除圧固定術が後方除圧術よりも優れていたとの報告である.このテーマは脊椎外科の永遠のテーマともいえる内容であり,いまだコンセンサスには至っていないが,非常に興味深い内容である.さらに,後方固定術の適応と注意点に関して,北海道せき損センターの須田浩太先生に記載していただいた.豊富なご経験に基づくきわめて実践的な内容である.また,近年目覚ましい進歩を遂げた内視鏡下後方除圧術に関しては,和歌山県立医科大学の南出晃人先生にお願いした.すでに200例に及ぶ豊富な症例に基づく安定した中長期成績を報告されており,適応を考慮すればきわめて有効な治療法といえる.最後に,脳神経外科からみた頸椎症性脊髄症の外科治療に関して,三重大学の水野正喜先生に依頼させていただいた.前方除圧固定術や後方除圧術を含む外科治療の選択と手技について脳神経外科の視点から解説していただいた.
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