Japanese
English
特集 椎間板の基礎と臨床
椎間板変性における慢性炎症と各種ストレス
Chronic Inflammation and Stresses in Intervertebral Disc Degeneration
藤田 順之
1
Fujita NOBUYUKI
1
1藤田医科大学整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, School of Medicine, Fujita Health University
キーワード:
慢性炎症
,
chronic inflammation
,
酸化ストレス
,
oxidative stress
,
小胞体ストレス
,
endoplasmic reticulum stress
Keyword:
慢性炎症
,
chronic inflammation
,
酸化ストレス
,
oxidative stress
,
小胞体ストレス
,
endoplasmic reticulum stress
pp.6-12
発行日 2023年4月17日
Published Date 2023/4/17
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002202003
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はじめに
厚生労働省「国民生活基礎調査」によると,腰痛は,有訴者率において男性では第1位,女性では第2位となっている国民病の1つである.また,腰部脊柱管狭窄症の国内患者数は200万人以上ともいわれているが,椎間板変性は腰痛の原因となるほか,腰部脊柱管狭窄症,腰椎椎間板ヘルニア,変性すべり症,成人脊柱変形などの脊椎加齢性疾患の病態の1つにも挙げられる.日本の超高齢化に伴い,慢性腰痛患者や脊椎変性疾患患者はさらに増大することが予想されるが,現在のところ椎間板変性を抑制する有効な治療法は確立されていない.椎間板は脊椎に存在し,脊柱の可動性や体重の支持性を担う重要な組織で,外側の線維輪と,中心に存在する髄核から構成されており,人体最大の無血管性組織である.これらの解剖学的特徴により,髄核は低酸素環境に曝されており,組織の恒常性維持に低酸素環境が機能していると考えられている5).
一方,脊椎変性疾患の基盤となる椎間板変性においては,細胞外マトリックスの分解亢進や,炎症性サイトカインの上昇,椎間板内の神経伸長,血管侵入などが認められるようになり,恒常性を維持している低酸素環境が破綻することが考えられている.
本稿では,われわれのこれまでの研究結果に基づき,椎間板変性における慢性炎症,酸化ストレス,小胞体ストレスの分子メカニズムを中心に概説し,将来の椎間板変性に対する治療の展望についても触れたい.
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