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はじめに
腰椎変性すべり症に対する手術治療は,除圧術か除圧固定術かに大別される.両者のうち,どちらを選択すべきかについては長年の議論があり,これまで多くの術式間比較研究が行われてきたが1〜3,5,6,10〜13),いまだに決着がついていないのが現状である.近年,相次いで発表された3つの前向き無作為割り付け試験(randomized controlled trial:RCT)においても結論が出ていない1,5,6).その主な理由として,変性すべり症には初期,進行期,終末期といった病期が存在し4,14),その段階によってすべりの程度や不安定性の有無が異なるにもかかわらず,この点が考慮されていないことが挙げられる.さらに,腰痛の有無やその由来,除圧術の方法が一定でないことも影響していると考えられる.変性すべり症の臨床成績を検討する際には,これらの背景を十分に考慮したうえでの議論が必要である.
当科では腰椎変性すべり症に伴う神経障害に対して除圧術単独で対応する場合,内視鏡下椎弓切除術〔microendoscopic laminotomy(MEL)およびmicroendoscopic lateral fenestration(MELF)〕を採用している.これらの除圧術では,必要最小限の骨切除と軟部組織の温存とともに除圧範囲が定型化され,均一化が図られている.その治療成績では,固定術への再手術率は5%に留まり,概ね良好である一方で14,15),すべり症の病期の進行により症状再燃をきたすことが判明している14).そのため,当科では,除圧術後に固定術への再手術もあり得るということを患者側に示し,プライマリーとしての手術治療方針を患者選択により決定している.すなわち,再手術の可能性もあり得ると理解していただいたうえで内視鏡下手術を選択する場合と,最初から固定術を選択する場合とに分かれる.
その結果として,当科ではL4変性すべり症に対する初回手術としての固定術は,概ね初期ではなくより進行した病期を有する症例で選択されていた.一方で,同様の条件であっても除圧術で対応した患者も存在した.病期分類において初期に相当する軽度の腰椎変性すべり症を中心とした除圧固定術と除圧術単独の比較研究は多く存在するが1,3,5,6,12),より進行したすべり症において両者を比較した報告は存在しない.そこで,本研究はすべりの程度および不安定性が強いより進行した腰椎変性すべり症において,固定術と非固定術(MELおよびMELF)の臨床成績を後ろ向きに比較し,内視鏡下除圧術の限界点を導き出すことにより固定術の適応を明らかにすることを目的とした.
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