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はじめに
頸椎椎弓形成術は日本で開発され,広く世界で行われている術式の1つである.多椎間にわたる頸髄圧迫に対して除圧を行う際に有効で,発育性脊柱管狭窄を伴う病変や3椎間以上の脊髄圧迫を認める症例などに適応とすることが多い.椎弓形成が報告される以前は椎弓切除術が行われていたが,post-laminectomy membraneの形成や後弯変形などが問題となり,椎弓形成術が開発された.一般に椎弓形成術開発までの椎弓切除術はpiece by pieceで椎弓を切除して除圧を行うことが多かったため,手術時間が長く,最狭窄部にパンチやケリソンを入れることによる脊髄障害の危険性があるなどの問題点もあった.椎弓形成術が開発されたことにより,椎弓を一塊として拡大することができ,最狭窄部にパンチやケリソンを入れることなく,脊髄を除圧できるようになった.また,椎弓切除術と椎弓形成術で正確に比較した論文はないが,椎弓形成術を行うことでpost-laminectomy membraneの形成や後弯変形の発生を抑制できる可能性が指摘されたため,頸椎椎弓形成術は現在広く一般化されている.
頸椎椎弓形成術における椎弓拡大の方法は,両開き式(図 1)と片開き式(図 2)に大別される.片開き式椎弓形成術は平林らによって開発され,1978年に片側の椎弓と関節面の間に溝を作成するシングルドアの椎弓形成術として報告された3).その後,1982年に黒川らによって,棘突起を縦割し椎弓と関節面の間に溝を作成し,両側に椎弓を拡大する両開き式椎弓形成術が開発された5).棘突起縦割を用いた両開き式椎弓形成術はその後さまざまな改良が行われてきたが,左右対称的に椎弓を拡大する方法を総じて両開き式椎弓形成術と呼んでいる.
椎弓形成の方法は施設の方針や術者の好みによって選択されることが少なくないが,手術成績の違いはあるのであろうか? われわれは2014年に両術式を前向きに比較(片開き式44例,両開き式46例)し,Spineに報告した8).この際に使用した片開き式椎弓形成術は椎弓拡大後に椎弓を筋肉や関節包に縫合する方法で,両開き式椎弓形成術は椎弓拡大後に棘突起から作成した自家骨スペーサーを縫合する方法である.結果は,周術期合併症に関しては両群間で有意差を認めなかったが,術後頸椎前弯角は片開き式椎弓形成術で小さく,また頸椎可動域(特に頸椎伸展角)が片開き式椎弓形成術で小さかった.また,椎弓形成後の脊柱管拡大率は片開き式で有意に大きい結果を得たが,神経学的改善には有意差を認めなかった.
このような無作為前向き試験は研究の質として高く評価され,可能な限りバイアスを排除した形で術式の比較を行うことができる一方で,研究を遂行する苦労も多く,症例数が十分に収集できなかった.本研究と同様に両術式を比較した論文はいくつか散見され,今回は両術式を比較したmeta-analysisから術式間の違いを再考すると同時に,近年報告されている興味深い両術式の比較論文の結果を紹介する.
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