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はじめに
頸椎症性神経根症は,神経根が椎間孔内で膨隆椎間板,椎体骨棘,Luschka関節,椎間関節によって圧迫され起こる疾患である.発生頻度が比較的高く,日常の診療で出会う機会が少なくない.その症状は後頸部・肩甲骨部痛から上肢へ放散する疼痛,ならびに罹患神経根領域に応じた感覚障害,運動障害などが中心である.保存治療にて多くが改善するが,保存治療抵抗例には手術治療が検討される.手術方法は前方法〔anterior cervical discectomy and fusion(ACDF)やanterior cervical foraminotomy(ACF),cervical total disc replacement(TDR)〕と後方法(椎間孔拡大術)に大別されるが,成績は同等とされる11).したがって,各術式の利点・欠点を理解したうえで選択することが望ましい.
頸椎後方椎間孔拡大術は,1944年にSpurling & Scoville16)によって初めて報告され,椎間可動性を温存し直接神経根除圧が可能であり,また前方法とは異なりアプローチに起因するさまざまな重要臓器損傷のリスクが少ないことが利点として挙げられる.直視下ならびに顕微鏡下椎間孔拡大術の報告では,93〜97%の神経根性疼痛の消失が報告されている4,6,20).また,Jagannathanら7)は椎間孔拡大術を施行した162例を5年以上観察し,95%に神経根性疼痛の消失を認めたとして,長期的にも安定した成績を報告している.一方,傍脊柱筋群への侵襲による頸部痛やスパズムは,後方アプローチの欠点ともいえる.そのため,さらなる低侵襲化を目的に,2001年にAdamson1)が内視鏡下椎弓形成術を,2007年にRuettenら15)が全内視鏡下椎間孔拡大術を報告した.これら低侵襲法は従来法と同等の治療成績であり,より出血量,鎮痛剤使用量,手術時間,入院期間が少なかったとの報告もみられ3,12),今後さらなる普及が期待されている.
これら椎間孔拡大術は,神経根症に対して単独で用いられるが,圧迫性頸髄症に対する椎弓形成術に併用することも可能である.しかしながら筆者の経験では,椎間孔拡大術単独と異なり,椎弓形成術に併用する際は脊髄の後方移動が起こるため,同じ術式でも留意点や術式の工夫が必要と考えている.椎弓形成術に椎間孔拡大術を併用する理由は大きく分けて2つある.1つは頸椎症性脊髄神経根症や頸椎後縦靭帯骨化症,椎間板ヘルニアなどの診断で頸髄症のみならず症候性の神経根症を認め,治療的な椎間孔除圧を行うケースである(治療的椎間孔拡大術).もう1つは術前無症候性の椎間孔狭窄が,椎弓形成術後に発症しないように予防的な椎間孔除圧を行うケースである(予防的椎間孔拡大術).本稿では,椎弓形成術に併用する顕微鏡下椎間孔拡大術に焦点を当て,椎間孔狭窄の画像診断,手術手技の実際,術式の留意点,治療的椎間孔拡大術,予防的椎間孔拡大術について論述する.
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