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いかに神経診察を学び,いかに学生やレジデントに教えるかは重要な課題である.自分を振り返ると,入局した新潟大学脳研究所神経内科の先輩方が,意識的に診察を見せてくださった.具体的には,教授回診では教授ともう1人の先輩医師が,患者さんを1名ずつ時間をかけてすべての神経診察を行うところを見せてくださった.また,『ベッドサイドの神経の診かた』(南山堂)を勉強するようにいわれ,繰り返し読んだ.脊椎・脊髄の診察に関しては,和訳されたHoppenfeldの『整形外科医のための神経学図説』(南江堂)が役に立った.
自分の診察の基本はこの2冊と,先輩の診察を見て覚えたものだったが,今から10年ほど前,自身の神経診察を考え直す機会が2度あった.1つは,東京大学名誉教授冲中重雄先生が監修する「復刻版神経疾患の検査と診断」(アオイスタジオ株式会社)というDVDを視聴したときである.1959年に制作された16ミリフィルム作品の復刻版であるが,その診察に時代遅れの感はまったくなく,むしろ現在の診察より工夫に富むものであった.自分では日常行っていない診察として,顔面神経麻痺に対する眼輪筋反射,痙性に対する交差性内転筋反射,手クローヌス,そして対称性共同運動が紹介されていた.また,翼状肩甲は,顔を拭く動作の際にはっきりわかることも紹介されていた.いちばん驚いたのは小脳性運動失調の診察で,通常の診察のほかに,「指叩き試験」として二重丸で書いた指標をなるべく早く叩いてもらう診察や,十字の交点をサインペンの先で叩いてもらい,そのズレをみる診察を初めて知った.後者はさらに,紙を叩く音を録音し,音の間隔や大きさの不規則さで失調の程度を「見える化」していた.
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