Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
今回のガイドライン(GL)が作成された経緯
歴史的にみると,脊柱靭帯骨化症の代表である頸椎後縦靭帯骨化症(cervical ossification of the posterior longitudinal ligament:C-OPLL)の概念の確立は,1960年の月本による剖検例の報告に始まる.脊柱靭帯骨化症にはC-OPLLのほかに胸椎後縦靭帯骨化症(thoracic ossification of the posterior longitudinal ligament:T-OPLL),胸椎黄色靭帯骨化症(thoracic ossification of the ligamentum flavum:T-OLF)があり,ときに重篤な神経障害をもたらす.これらの疾患は原因不明であること,わが国に多いこと,治療困難な例があることが認識されており,これまで整形外科医を中心にその病因解明,診断・治療法の開発に向けてさまざまな研究が行われてきた.特にC-OPLLは1975年に厚生省の特定疾患に指定され,調査研究班が設けられた結果,研究活動が活発になるとともに組織化された研究も行われるようになった.その後,T-OPLL,T-OLFも難病に指定されるようになった.現在でも脊柱靭帯骨化症研究班は継続されており,病態解明や治療法の開発を目指して全国的な多施設研究も行われている.さらに,本疾患の認識は海外にも広がっており,数多くの論文がアジア地区のみならず欧米からも発刊されている.本疾患の研究の過程においては,わが国において臨床面で頸椎椎弓形成術や前方骨化浮上術などの新規の外科手術が開発された.また,基礎面では脊髄病理,骨形成,骨代謝,ゲノム研究など多方面からの知見が集まってきていた.
このような背景の下で脊柱靭帯骨化症診療ガイドライン(GL)1)が2019年9月に発刊された.これは脊柱靭帯骨化症における初版と位置づけられている.それは,本GLがC-OPLLだけでなく,T-OPLL,T-OLFを含む内容になっているからである.一方,広義には強直性脊椎骨増殖症も脊柱靭帯骨化症に含まれる.しかし,これは前縦靭帯の広範な骨化により脊柱の可動域制限をきたしたり,嚥下障害をきたしたりする可能性のある疾患で,直接脊髄や神経根を圧迫するものではない.よって,本GLからは除外している.
Copyright © 2020, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.