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本号では,「脊椎脊髄疾患と間違えられそうになった症例・疾患」というタイトルで特集を組ませていただいた.「〇〇疾患と脊椎脊髄疾患の鑑別」という特集はこれまでも多かったと思うが,今回はもう少し踏み込んで,他疾患が脊椎脊髄疾患と間違えられてフォローされていた,あるいは手術をされそうになった(されてしまった),他疾患が脊椎脊髄疾患として紹介されたなどの実例をまず提示してもらった.そのうえで,「どうして間違えられるのか,どうすれば防げるのか」という観点を念頭に置いて,当該疾患の総説を書いていただいた.
選んだ疾患は,ミオパチー,手根管症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP),腕神経叢障害,後根神経節炎(特にSjögren症候群に伴うもの),首下がり,筋萎縮性側索硬化症(ALS),大脳皮質基底核変性症(CBS),ヒステリー性麻痺である.これらはいずれも私がこれまでに脊椎脊髄疾患と間違われそうになったという経験を有している疾患である.それで知り合いの方々に,同様の経験はないかとお尋ねしたところ,それぞれ当該疾患でそのような経験があるとお返事をいただき,執筆をお願いしたものである.出来上がってきた原稿をざっと拝見したが,それぞれ力作であり,かつ込められているメッセージは驚くほど共通している.すなわち,「画像のみに頼るのではなく,神経症候をしっかり検討することが誤診を防ぐ第一歩」ということに尽きる.さらに,脊椎脊髄外科医と神経内科医の連携が重要というメッセージも何人かの方からいただいた.脊椎脊髄外科医にももちろん神経症候のexpertの方も多いが,神経症候学は神経内科の拠って立つゆえんであり,神経症候による診断には神経内科医が最終責任をもつべきと考えている.本特集は誤診をした外科医を糾弾するのが目的ではない.脊椎脊髄外科医と神経内科医が連携を組んで,脊椎脊髄疾患やその鑑別疾患を両科の目から見ることが適切な診療につながり,患者さんの利益となって国民医療に資するという想いである.実は神経内科医にも,末梢の神経筋疾患,脊髄疾患はあまり得意でないという人がかなりいることも残念ながら事実である.本特集は,そうであってはいけないと後ろを振り返ることも目的としている.
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