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本誌では,2006年の19巻10号に服部孝道先生の企画で「器質性疾患と心因性疾患との鑑別診断」(日本のすべての医学系雑誌の中で最初に「ヒステリー」を取り上げた特集と思われ注目される),2020年の33巻3号に私の企画で「心因性疾患(変換症/転換性障害;ヒステリー)の現在」という特集が組まれた.今回は前回から4年しか経っていないのだが,この4年間だけでも機能性神経障害(FND)を巡る状況には,特に脳神経内科領域で大きな変化があった.日本神経学会では2023年に機能性疾患/精神科領域疾患のセクションが設立され(下畑享良先生チーフ),同年6月の学術大会において,英国のJon Stone先生を迎えてのシンポジウムが開催され,大きな反響を呼んだ.33巻の特集時には変革の予兆を感じただけだったが,昨年あたりからそれがまさに現実の大きな流れとなりつつある.私事となるが,今回私が約15年間務めた本誌の編集委員を退任するにあたり,この新しい潮流を最後に紹介したいと思い,「機能性神経障害(FND:ヒステリー)診療の革命」と題した本特集を企画させていただいた.
世界的にはこの20年余において,FND診療に革命的変化が起こっている.それを主導されたのが上記のStone先生で,上記神経学会でのご講演を当科神林隆道筆頭で日本語に起こしたものを特集論文の1つとした(Stone先生にも共著として内容をご確認いただいた).下畑享良先生には神経学会としてのFNDへの取り組みをまとめていただいた.以前からStone先生と交流のある是木明宏先生には,精神科的立場からFNDの現在考えられているメカニズムを中心に論じていただいた.竹下克志先生には,陽性徴候が少なくなかなか診断の難しい痛みの問題や術後のFNDなど,整形外科ならではの問題について解説いただいた.私のほうからはFND診療の歴史と最新動向,陽性徴候とFND診断という2つのテーマで書かせていただいた.そして,本特集で特筆されるのは治療面の論文も加えたことで,渡辺宏久先生には脳神経内科的手法,まさにStone先生が導入された革命的方法の実践の仕方を実例を交えながら解説いただき,そして関根徹先生にはリハビリテーション治療という今後大いに期待される手法についての,おそらく本邦で初めての詳細な解説をいただいた.
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