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「脊椎脊髄〜末梢神経の局在診断update」という特集を組ませていただいた.脊椎脊髄疾患ではその鑑別対象である末梢神経疾患と合わせて,鑑別診断とはまず第一に局在診断にほかならない.とりわけ,手術を行う外科医にとっては,局在診断の間違いは訴訟にもつながりかねない死活問題であろう.今日,MRIを筆頭とする画像診断が高度に発達しているので,病変局在には何の苦労もいらないのではないかという考えもあるかもしれない.しかし,もしそのような考えをおもちの脊椎脊髄外科医,脳神経内科医がいらっしゃるとすれば,それは大きな間違いであり,誤診で手痛い目に会う日が近い将来に待っていることが,残念ながら確実である.これは,画像は機能をみることはできず,かつ,健常者でも特に高齢者ではMRIでの脊椎の異常所見は高頻度にみられる,すなわちMRI異常の特異度が低いという限界に起因する.すなわち,「手がしびれます」「首のMRIに異常がありました」→「あなたのしびれは首からですね」にはならないのである.
局在診断において最も重要なのは臨床症候である.次いで,電気生理学的検査は臨床症候と直接対応する機能をみることができるので,正確な局在診断に貢献することが期待できる.ただし,臨床症候からの局在診断における基礎データの1つである各筋の神経根支配,すなわち筋節については,成書間の不一致がある.また,いわゆる偽性局在徴候と総称される,局在診断における常識から外れた徴候,間違えやすい徴候などが従来から記載されている.本特集では,これらの観点,および代表的な症状である手指の運動障害・しびれや下垂足の局在診断について,各領域のエキスパートに論じていただいた.また,画像検査のうち,従来評価が難しかった末梢神経の容易な評価法として近年臨床応用が進んでいる神経超音波検査についての項も設けた.
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