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脊椎脊髄疾患を扱う外科医にとって,症候が内科的疾患によるものではないかは,手術適応を間違えないうえでの非常に重要なポイントとなる.通常,神経内科医にコンサルトがなされるだろうが,ここで神経内科医も,たとえば,筋萎縮性側索硬化症(ALS)や多発性硬化症/視神経脊髄炎(MS/NMO)など,いわゆる通常神経内科疾患とされる疾患には十分詳しいと思われる.また,脊椎脊髄外科医のほうもこれらの有名な神経内科疾患については,今日一通りの知識を有しているであろう.しかし,膠原病性,栄養欠乏性,傍腫瘍性,その他,神経内科においても「一般内科的疾患」に分類される場合が多い種々の疾患に伴う脊髄障害は,神経内科医にとっても盲点となりやすい.本特集は,やや頻度としてはまれなそのような諸疾患に焦点をあて,神経内科医・外科医とも,これらの疾患の概要・臨床特徴を理解して,診断において見逃さないことを目的として企画した.
取り上げた疾患は,Sjögren症候群,ANCA関連血管炎による脊髄梗塞,アトピー性脊髄炎,傍腫瘍性壊死性脊髄症などの,自己免疫ないしそれに準じる疾患,コモンな感染症である帯状疱疹他のウイルス性脊髄炎,診断治療とも難しい血管障害である脊髄梗塞,欠乏症による脊髄障害の代表である亜急性脊髄連合変性症(ビタミンB12・葉酸欠乏),内科と整形外科の境界領域という感じで実は結構コモンな疾患である偽痛風の一種であるcrowned dens症候群などである.それぞれ,これらの疾患を実際に症例報告等されており,経験豊富なエキスパートの方々にご執筆いただいた.自験例も提示されていて,参考となる.中でもアトピー性脊髄炎(atopic myelitis)は,共著である九州大学神経内科吉良潤一教授らが世界で最初に報告提唱した疾患であって,日本発の新しい疾患概念である.慢性に経過する例では脊髄腫瘍と間違えられることも多く,脊髄外科医も知っておくべき概念である.
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