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頸椎症はcommon diseaseであって,神経内科医,整形外科医,脳神経外科医,いずれも多く経験する疾患であり,さらにはプライマリケア医や内科医も頻繁に遭遇するものと思われる.頸椎症性脊髄症や神経根症の典型的な症候であれば,神経関係の専門医には診断は難しくないと推測されるが,それでさえ,MRIなどの画像のみに頼って臨床症候の検討をおろそかにすると,容易に誤診に陥る可能性がある.さらに,障害高位や病態によっては,他疾患と間違えられかねない特殊な症候を呈する場合がある.頸椎症を扱う可能性のある専門医であれば,これらについてもpitfallとして熟知していることが要求される.本特集は,そのような頸椎症のさまざまな特殊な症候について,読者に親しんでいただくことを目的として企画した.
まず,障害高位による特殊な症候学として,high cervicalの頸椎症,C6/7 myelopathy,T1 radiculopathyを取り上げた.High cervicalのうち特にC3/4高位での脊髄症は高齢者に多く,特異な症候に早く気づいて,必要に応じて手術を行うことが重要である.C6/7 myelopathyは上肢症候を呈さないためにしばしば誤診される,忘れてはならない病態である.High cervicalについては和歌山労災病院整形外科の安藤宗治先生,C6/7 myelopathyについては山口大学整形外科の舩場真裕先生と,それぞれ当該のテーマの論文を書いておられるexpertの方々にご執筆いただいた.T1 radiculopathyはきわめてまれな(ないし気づかれていない)疾患であり,日本での数少ない本疾患の経験者である東北中央病院田中靖久先生にご執筆いただいた.運動系の特殊な症候学として翼状肩甲と下垂指(drop finger)を取り上げた.翼状肩甲は,頸椎症でのまれなこの症候の報告者である安城更生病院神経内科安藤哲朗先生にお書きいただき,下垂指は上述田中先生がご報告された新しい概念だが,今回は私が書かせていただいた.感覚系の症候としては,従来の定説を覆す見方を提示している,中部労災病院神経内科亀山 隆先生と,われわれのグループから1報ずつの掲載とした.教科書は正しいとは限らない.虚心に患者さんの症候をみれば,定説を覆すことがまだまだ見つかる可能性があるのである.最後に,忘れられがちな自律神経障害について,その分野のexpertである神経内科津田沼朝比奈正人先生にご執筆いただいた.
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