Japanese
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特集 骨癒合の基礎と臨床
骨の再生医療の現状と将来
Bone Regeneration—Current Situation and Future Prospects
海渡 貴司
1
Takashi KAITO
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)
1Department of Orthopaedic Surgery, Osaka University Graduate School of Medicine
キーワード:
骨再生(bone regeneration)
,
骨形成因子(bone morphogenetic protein:BMP)
,
脊椎固定(spinal fusion)
Keyword:
骨再生(bone regeneration)
,
骨形成因子(bone morphogenetic protein:BMP)
,
脊椎固定(spinal fusion)
pp.653-657
発行日 2016年6月25日
Published Date 2016/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200407
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はじめに
骨再生治療は一般的に,骨の自己再生能力で治癒が困難である外傷後・腫瘍切除後の広範囲骨欠損や偽関節を対象としている.一方,脊椎分野における骨再生は,病的に生じた脊柱不安定性の治療(脊椎すべり症など)および変形治療目的の手術により生じる脊柱不安定性を早期に骨癒合させ安定させることを目的としている.広範囲の骨欠損症例が少ないことと,介在している関節面や椎間板腔を骨組織で癒合させることを目的としていることが特徴である.骨形成量が多くないことから骨を造るという観点からのハードルはそれほど高くないが,周囲に神経組織などがあるため骨形成過程で生じる副作用をいかにコントロールするかが課題となっている.脊椎固定術の件数は人工膝関節や人工股関節手術を上回る頻度で増加していること,健康寿命の延伸や低侵襲手術の進歩により,骨質および骨形成能が低下した高齢者を対象とする頻度が増えていることから,骨癒合不全や偽関節によるQOL低下やインプラント折損による再固定手術などを抑制するため骨再生治療の脊椎領域への応用のニーズは高まっている.また,脊椎固定術における偽関節率は10〜20%と報告され,危険因子として報告される高齢,喫煙,糖尿,女性などはまさに腰椎すべり症や脊柱変形の治療対象となる患者像と一致する.自家骨・同種骨・人工骨による骨癒合・骨再生は他稿に譲り,本稿では生物学的な骨再生の現状および将来につき述べたい.
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