綜説
網膜再生医療の現状
万代 道子
1
1理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト(神戸市)
キーワード:
網膜変性
,
iPS細胞
,
網膜移植
,
臨床研究
Keyword:
網膜変性
,
iPS細胞
,
網膜移植
,
臨床研究
pp.913-916
発行日 2017年9月5日
Published Date 2017/9/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000115
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網膜の移植治療は10 年余り前より非常な注目を集めてきた。古くは胎児網膜の移植が試みられた時期があり,Seiler らのグループをはじめ,一部の国では胎児網膜の移植や研究が行われていた1)。ラットを用いて網膜変性モデルに胎児網膜を移植すると,眼球運動中枢である上丘で移植後光応答が拾える,といった研究が報告されていたが,組織学的には移植後の網膜はホストの内層と移植片の内層が2 重構造になっており,実際にはどのようにシナプスが形成され視覚伝達経路が再建されているのか,不明な点も多かった。また2008 年にはヒトでの胎児網膜移植の臨床研究も報告されたが,網膜色素上皮も一緒に移植されていたり,対象疾患が網膜色素変性のみならず加齢黄斑変性を含んでいたりすることからも,その治療効果が移植片による視機能再生によるものかどうかは定かではなく,また胎児の網膜を移植するというのは倫理的な困難も伴い,あまり発展的な治療ではなかった2)。
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