Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
転移性脊椎腫瘍の手術療法は,体内にがん細胞を宿し,それが臓器のバリヤーを越えて血液中を全身にめぐり脊椎に転移した状態であるため,耐えがたい疼痛や四肢の麻痺を改善させるためとはいえ,極力手術による体力の消耗は避ける必要がある.根治療法が可能な状態,すなわち原発巣が完全に切除されていたり,完全なコントロール下におかれている場合で,かつ,転移巣が椎体内のcompartmentに限局している場合には,侵襲が大きくてもTES(椎体全摘出術,total enblock spondylectomy)により体内から腫瘍細胞を消失させることに異論はないが,姑息的な手術が適応される場合には可能な限り低侵襲な手術が本来望まれている.しかし,これまではopenでの除圧固定術が当然のごとく繰り返されてきた.近年,悪性腫瘍の治療も急速に進歩しており,抗がん剤の発達や分子標的薬の出現による腫瘍標的療法が普及するに従い,従来では脊椎に転移が確認された時点で生命予後が数カ月単位しか見込まれなかったがんも,年単位での生存が可能となってきている.このため従来では6カ月以上予後がないため麻痺が出現しても手術適応にならなかった例が,予後の延長と手術の低侵襲化により姑息的手術の有用性が再認識されるようになった.
一方,近年,脊椎の分野においても各種手術器具の開発に伴って小侵襲手術が急速に普及しつつある.特に固定術の分野は,元来のopen手術そのものが除圧術と比較し侵襲が大きいことより,より低侵襲化の恩恵を受けやすい側面を有している.約10年前,経皮的椎弓根スクリュー挿入システム(percutaneous pedicle screw:PPS)であるSextant(Sofamor Danek社)がFolyら1)により開発され,約9年前日本に導入されてから最小侵襲脊椎安定術(minimally invasive spine stabilization:MISt)の臨床応用が始まった.当初,MIStは後方進入椎体間固定術(posterior lumbar interbody fusion:PLIF)の低侵襲化であるMIS-TLIF(minimally invasive spine surgery-transforaminal interbody fusion)で開始されたが,その後多椎間固定術用のシステムの開発とともに,このPPSを用いて新たな治療法が開発されてきた.本稿では,MIStのうち最近急速にその適応が広まってきた転移性腫瘍に対するPPSを用いた多椎間固定術を解説する.
Copyright © 2015, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.