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はじめに
けいれん後の一時的な運動麻痺は,本邦ではTodd麻痺という名でよく知られているが,PubMedで検索すると意外に文献は少ない.Todd麻痺は軽度だったり完全だったりするが,一般的には身体の一側に生じ,持続時間は20分以内と短いことが多く,長くても36〜48時間以内に収まる.すなわち可逆性が特徴である.同様の麻痺は言語や感覚,眼球の位置や視覚にもみられることがある.運動麻痺としてのTodd麻痺はすべてのけいれんの約1/7に生じたという報告があり4),けいれんの病型としては全般性の強直間代性けいれんに続発することが多い.Todd麻痺の正確な機序はいまだ不明であるが,2つの仮説が提唱されている.すなわち,第一は「枯渇」理論であり,運動皮質が疲労して神経過分極が長引くというものである.第二はNMDA受容体の活性化による運動神経の一過性不活化という考えである.
Todd自身が記載したのは片麻痺や半身感覚障害であり,Todd麻痺はけいれんの全身的様相というよりも発作焦点の局在を示唆する症候と思われる11).しかし,大発作に引き続く意識不鮮明や全身の脱力も同じ機序によると考えるのは合理的であり10),実際,複雑部分発作の後でけいれんしていた肢の対側の肢に麻痺が生じた症例の報告9)がある.したがって,けいれんが重積するような状況では,その後の四肢麻痺を可逆性が期待されるTodd麻痺と断定的に捉えてしまって,ほかの鑑別が疎かになる恐れがある.実際,当初四肢麻痺がTodd麻痺とされた中心性頸髄損傷例があるし7),けいれんで発症し,四肢麻痺を呈した脳底動脈先端症候群(top of the basilar syndrome)例8)や強直性脊椎炎の存在下にけいれん後に硬膜外血腫から四肢麻痺をきたした例1),けいれんによる頸椎亜脱臼例12)もあるので,判断には慎重さが要求される.
本稿では,以前報告した3),けいれん重積後に頭部以外の運動が麻痺した患者において頸椎病変の発見がやや遅れた症例を再度紹介し,文献的考察を加える.
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