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Key Questions
Q1:脊髄損傷の多様化に伴う作業療法の大きな変化とは?
Q2:完全麻痺者,不全麻痺者,困難事例に対する作業療法アプローチとは?
Q3:脊髄損傷に対する作業療法の役割は?
はじめに
当センターにおける脊髄損傷に対する作業療法は,パラリンピック発祥地 英国ストーク・マンデビル病院Spinal Cord Injury Centerに1971〜1973年の3年間,勤務した森永憲子氏が,帰国後に当センター作業療法科に在籍した1974〜1982年にかけて,①simple deviceの紹介,②基本動作訓練用ダブルベッドの設置,③QOLのためのピア・カウンセリング導入等,「心身機能を含むcapability向上へのactive approach」を伝承し,多くのスタッフが継承/発展してきた1).
その後,国内の作業療法士から「片麻痺は多く経験するけれど,脊髄損傷による四肢麻痺や対麻痺は何をしたらいいかわからないから教えてほしい」というような多くの要望や相談があり,元 当センター玉垣 努氏(現 神奈川県立保健福祉大学)を発起人として,①脊髄損傷の作業療法探求,②脊髄損傷の作業療法ネットワーク形成を目的とした「脊髄損傷作業療法研究会SCIOT」が発足した2).
当研究会では,「頸髄損傷をはじめとする脊髄損傷者のADL自立度やQOL向上は,療法士の知識や技術によって大きく左右される」と考えている.今までの臨床経験では,高位の頸髄損傷者であっても自分の身体を知って動くことができれば,さまざまな自立の可能性をもっている.そのため療法士は,①自立予後の限界をつくらないこと,②対象者/家族と一緒に目標を定めること,③対象者/家族に寄り添って共に歩むこと等,多くのことを学んでいる3).私たちは,臨床家の仲間作りのみならず,貴重な臨床経験を伝え合うことで「脊髄損傷に対する作業療法」格差がないように心から願っている.しかし,この30年間の脊髄損傷の多様化に伴い,私たちの脊髄損傷者への作業療法は大きく変化している.具体的な障害像には,以下が挙げられる.
・積極的なADL支援や社会参加が期待できる完全麻痺者
・高齢者の転倒等による不全麻痺者
・ADL支援や社会参加を促せない困難事例
・脊髄損傷者の加齢に伴う合併症患者
・近年始まった再生医療後の脊髄損傷者
今回は脊髄損傷の中でも,①完全麻痺者,②不全麻痺者,③困難事例に対する作業療法を紹介したうえで,「脊髄損傷に対する作業療法の役割」を述べていきたい.
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