提言
「急性期の作業療法」と「作業療法における急性期」
阿瀬 寛幸
1
Hiroyuki Ase
1
1順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター
pp.1396-1397
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203616
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大学病院での作業療法
私は入職以来20年間,大学病院での臨床に取り組んできた.当初より,脳卒中やパーキンソン病,がんに罹患された方々に携わる機会を多くいただいた.大学病院は医療の最前線であり,医療者,患者ともに難病や原因不明の疾病等に対して,「治療する」ことに全力で取り組む場所である.一方,無情にも病状悪化等により,多くの別れも経験した.
私がOTを志したきっかけは,私の子ども時分に脳卒中発症により意識障害のある家族の姿を見て,そこはかとない恐怖を感じ,亡くなるまで指一本触れられず後悔したことだった.そのため,命の誕生から終焉までかかわることができる作業療法はとても魅力的だと思った一方,「治療が難しい」と判断されると,医療者の訪室や医療処置が次第に減っていき,置き去りにされたように感じられた対象者にかかわり続けるのがとてもつらかった.20年前といえば,「がん」であることを最後まで本人に伝えられないこともめずらしくなかった時代である.そして「長い自分史の終焉を迎えようとしている最中,このような寂しい人生の終わり方しかないのだろうか」と感じたことが,緩和ケアやがんの作業療法に興味をもったきっかけだったように思う.
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