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特集 認知症の人に対する新時代の作業療法
高齢者や認知症の人の「暮らし」の障害に対する作業療法の視点
Occupational therapy perspectives on difficulties of “Living” in older adults with/without dementia
田平 隆行
1
,
下木原 俊
2
Takayuki Tabira
1
,
Suguru Shimokihara
2
1鹿児島大学
2日本学術振興会
pp.1336-1341
発行日 2023年11月15日
Published Date 2023/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203599
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Key Questions
Q1:「予防」に大切な作業療法の考え方とは?
Q2:介護保険領域でより重要となるADL介入の時期や種目とは?
Q3:デジタル生活に対応したADL介入のポイントとは?
「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM5-TR)」1)において,認知症の診断基準には“毎日の活動において,認知的欠損が自立を阻害する”とされ,ADL障害が診断の大きな基準となる.高齢者は,老年症候群をはじめとする多くの併存疾患を有しているため,認知機能以外の身体症状,感覚症状,環境要因等が自立を妨げている可能性は極めて高い.しかしながら,OTが認知症の方と出会う場でも異なってくるが,認知機能低下がADL障害にどのように影響を及ぼしているかを考察することは,目標設定や介入戦略に重要である.
認知機能の低下は,通常老化の段階でも生じており,高齢者の27%を超える一人暮らしの方の社会・生活管理に支障を及ぼしている2).たとえば,会合等,予定していた用事の忘れ,必要品の買い忘れ,請求書の支払い忘れ,電気の消し忘れ,傘の置き忘れ等であり,われわれ自身も経験する高度な管理エラーである.これらのエラーの頻度が増加することにより,一人暮らしの継続が危ぶまれる.家族のみならず,民生委員,新聞配達員,郵便局員,近隣住民等,さまざまな方の見守りによって,認知機能が低下しても「住み慣れた家」に居住することができているのかもしれない.「生活を観る」ことが得意なOTは,FIMやBI等の評価表の上でとどまるだけでなく,その人のマクロかつミクロの「暮らし」(背景,物語および遂行状況)を知り,支援していくことが求められる.
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