Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Key Questions
Q1:本人だけを支える支援になっていないか?
Q2:残された家族のことまで考えてかかわっているか?
Q3:最期まで本人・家族の希望を支えようと示しているか?
はじめに
日本訪問リハビリテーション協会1)は,“訪問リハビリテーションとはその人が自分らしく暮らすために,それぞれの地域に出向いて,リハビリテーションの立場から行われる支援である.その中で,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は,健康状態を把握した上で,生活機能および背景因子を評価し,リハビリテーションの概念に基づいた,本人,家族等への直接的支援と関連職種への助言等の間接的支援を提供する”としている.
訪問看護ステーションからの訪問作業療法(以下,訪問OT)では,対象者を直接的に支援するだけでなく,家族に対して行った支援が対象者に影響を及ぼす場面に出会う機会が多い.宇田2)は,“対象者の状況を全体的に捉える場合,主介護者の身体機能,精神・認知機能,介護に対しての知識や価値観,利用者との関係なども十分評価しておく必要がある”,また“得られた情報はリスク管理やご家族への支援を行う際に用いられ,効果的な家族支援の実現につながっていくと考える”ことの重要性を述べている.対象者を支援する際,われわれはICFの考え方に基づくアセスメントを行っているが,ICFの環境因子には「家族」も含まれていることを忘れてはならない(表3)).
本特集のテーマである看取りや緩和ケアにおける作業療法の役割では特に,対象者への支援だけでなく,家族支援の重要性が大きい.緩和ケアにおける家族介護者は,通常,患者に対する支援の提供者としても定義されている4).一方で,緩和ケアにおいて,進行する非治療疾患の患者とその家族介護者の相互的関係性に焦点を当てた研究はほとんどない4).日本では,死亡数は今後も増え続け,ピークとなる2040年には168万人に達すると予測されている5).この情勢を考えると,訪問OT場面で緩和ケアに携わる場面も増えてくることが予測できる.
終末期がん患者に対するOTの役割を明確にし,OTが自ら治療を振り返る手段として開発された「終末期がん患者に対する作業療法士の実践自己評価尺度」(Self-Rating scale of Occupational Therapists for Terminal Cancer)6)では,その第1因子に「家族に対するアプローチ」が挙げられている.また田尻7)は,3人のお母様から学ぶ,最期の時に希望される過ごし方とOTの役割について,親子で行うレガシーワーク(思い出づくりや生きた証を残すこと)の提案をしつつ,終末期に差しかかっておられる方々にはさまざまな苦痛(トータルペイン)が存在し,決してOTだけで太刀打ちできるものではないとして,事例を中心とした人的・物的環境の中で,「OTに何ができるか?」,「適役は何か?」,模索した日々の中で有機的・柔軟に変化していくことの重要さを提言している.
そこで本稿では,がん末期の対象者へのかかわりと,緩和ケアに欠かすことができない存在であるご家族も含めたかかわりを通して,「訪問の作業療法における家族支援の必要性」について考察する.
Copyright © 2023, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.