Japanese
English
特集 運転と地域での移動支援
地域で生活する認知症者への支援
Support for people with dementia living in the community
松浦 篤子
1
Atsuko Matsuura
1
1荒尾こころの郷病院
pp.146-151
発行日 2023年2月15日
Published Date 2023/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203278
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Key Questions
Q1:高齢者にとって運転はどういう意味をもつのか?
Q2:認知症者はなぜ運転にこだわるのか?
Q3:運転中断後の代替移動手段の獲得はどうあるべきか?
はじめに
超高齢社会を迎えたわが国において,高齢ドライバーの増加は社会的問題となっている.高齢者による重大な交通事故を契機に,道路交通法も見直されてきた.わが国の運転免許制度では,高齢者自身によって運転免許が自主的に返納されることを理想とし,さらに,さまざまな機会を捉えて認知機能検査を行って,できるだけ早期に認知症の運転者を見つけ出すことを目指している1).しかしながら,周囲から免許返納を勧められても運転を継続している高齢者は少なくない.
人はなぜ,運転免許を取得するのか.身分証明として必要という者もいれば,就業に必須という者,通勤・通学,家族の送迎等の移動手段として必要な者もいる.公共交通機関の衰退した地方都市では,自動車は生活を維持するために欠かせないものでもある.
安全という観点から,他者が運転を中断させようとすればするほど,高齢者は運転にこだわる傾向がある.運転の理由は個々に異なり,代替の移動手段は,置かれている状況に大きな影響を受ける.認知症者には,切り替えた新しい移動手段を使いこなすことが困難である.対象者と丁寧に向き合い,運転のもつ意味を理解し,代替移動手段の検討を行っていくことが,高齢者の運転に携わるOTとして大切なポイントと考える.
認知症高齢者への運転中断支援について,問いにまつわる知見を紹介する.
Copyright © 2023, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.