連載 作業療法を深める・第73回
患者中心の医療の実現に向けて—患者経験価値(Patient Experience:PX)の実践
出江 紳一
1
Shin-ichi Izumi
1
1東北大学大学院医工学研究科
pp.52-57
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203250
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はじめに
医療の質を構成する6つの項目として,有効性,公平性,安全性,適時性,効率性に加えて,患者中心性がある.有効性は,科学的な根拠に基づく医療が提供されること,公平性は提供される医療が患者の社会経済的・文化的背景に左右されないこと,安全性は予防可能な有害事象を回避すること,適時性は診断・治療の遅延を少なくすること,効率性は医療資源の浪費を回避すること,そして患者中心性は患者の意向・価値・ニーズを尊重することである.
患者経験価値(Patient Experience:PX)は患者中心性の指標である.患者中心性を重視すると効率性が犠牲になるのでは等,一見すると他の項目と相反する部分があるようにみえるがそうではなく,患者中心性の向上は他の項目の改善と関係することが知られている1).これらの研究において,患者中心性はPXサーベイと呼ばれるアンケート形式の尺度を用いて計測されている.
本稿ではPXに基づく医療の質改善への取り組み事例を3つ紹介する.1つ目は大規模総合病院においてPXサーベイを活用し改善項目を特定して成果を挙げた事例,2つ目は中規模専門病院において連続的にデータをモニタリングすることにより新型コロナウイルス感染症まん延の影響を解析して対策を立てた事例,3つ目は訪問看護ステーションにおいて外来版PXサーベイを実施したことによって業務改善ポイントが明らかとなるとともに強みの裏にあるリスクにも気づいた事例である.これらは第24回日本医療マネジメント学会での発表2〜4)に基づいている.PXの基本的な知識は前稿5)を参照していただきたい.
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