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アフターデジタルの時代が来る
COVID-19の感染拡大により,世界のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)は一気に加速した(図 1).コロナ禍におけるわれわれの生活を振り返ると,電子決済サービス,オンラインコミュニケーションツール,フードデリバリー,シェアカー/サイクル,配車アプリ等,あらゆる領域でデジタル化やDXの恩恵を受けていることがわかる.デジタル化に関する日本の考え方は,リアルを中心に据えてデジタルを付加価値と捉えることが多い.たとえば,リハ室でいつも会っている患者が,たまにアプリを使って記録してくれる等のイメージだ.しかし,オンラインがオフラインに浸透していくと,オフライン-オンラインの主従関係が逆転し,純粋なオフラインという場が少なくなっていく.たとえば,SNSやZoom等でコミュニケーションをとるのがあたり前のセラピスト仲間に,学術大会等で初めてリアルで会ったものの,初めて会った気がしないという経験はないだろうか.結局は,その後もコミュニケーションの中心はオンラインであり,リアルで会うのは年に多くても数回であることが多い.これはオンライン中心の体験にオフラインの体験が包含されるという“アフターデジタル”という概念を代表する一つの事例である(図 2).
世界の動きはアフターデジタルへと向かっているが,日本,その中でも特に,われわれが働く医療介護業界におけるデジタル化やDXの普及は遅れているうえに,Zoom等のオンラインツールで運動指導をするようになった等の間違ったDX事例が広がっている傾向がある(ただのデジタルツールの導入はDXとはいえない).本質的なDXとは,デジタル化を経て,セラピストの価値観や働き方,医療介護領域のビジネスモデルが変革するという概念であり,単なるデジタル化ではないという前提を共有しておきたい.
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